ピアノを弾かないピアノ曲

一音もピアノを弾かない曲をご存知ですか。
伴奏者はピアノに向かいますが何もピアノを弾きません。聴こえてくるのは客席でジッと耳を傾けている聴衆の息づかいや会場内の小さな雑音。しばらくして伴奏者は立ち去り演奏終了となります。
この奇抜な作品はアメリカの作曲家ジョン・ケージの【4分33秒】という曲です。

一音も鳴らない曲の楽譜は、何も書いていない白紙の五線譜想像すると思いますがそれでは曲にはなりません。
この曲はしっかり3楽章の構成をもち、それぞれの楽章はTACETで成り立っています。つまり全曲休止となるので音が鳴らないのです。何も弾く音は書かれていませんが、曲として成り立っているので楽譜も販売されています。

この楽譜は何の楽器で演奏すべきか、休止はどのぐらいの長さなのかという指示はなく、初演したのがピアニストで演奏を始めてから終えるまでの時間が4分33秒だったことから、【4分33秒】というタイトルがつけられピアノ曲として一般的なジャンル分けとなりました。

全てが演奏者に委ねられているので、ピアノ以外のバリエーションに富んだ楽器編成や、4分33秒以外の長さの一音も弾かない演奏が可能という事になります。